大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」RELAY COLUMN

教育学部

2025.03.31

魅力ある教育の中で、みんなとともに「生きる力」を!

筆者:藤原彰子(教育学部教授)

1.ヘンなきもち・・・?

  ぼくは うちゅうひこうし。いろんなほしの ちょうさをするのが、 ぼくの しごとだ。このほしの ひとたちは、うしろにも 目があるので まえも うしろも いちどに みえるらしい。
 「キミ、うしろが みえないの?」 「えー?! ふべんじゃない? かわいそう!」
 「すごーい!ちゃんとあるいてる!」 「みんな よけてあげてー!」
 「みえかた」がちがうだけなのに みんな すごく きをつかってくれて、ヘンなきもちだった。 ☆1

  みなさんは、こんな「ヘンなきもち」になったことがありますか? 

2.じっとしているのが苦手です/木を見て森を見ず/ぼくの世界は これで完成してる

 席に座っていても、座り続けるのは大変です。好きなことをしているときには良いのですが、それ以外のときは少しの刺激や感情に行動が左右されます。(中略)動いていると安心というわけでもないのですが、動いていれば少し不安から解消されるのです。一般には、静かにきちんとしている状態が、落ち着いている状態だと思われていますが、中にはとても苦労して座っている人も存在することを知って欲しいです。 ☆2

 木を見て森を見ずという言葉がありますが 私は木も見ていないような気がします
 自然と着目するのは 葉脈です ☆3

 ぼくに与えられた体と心で 世界を感じ直してみれば やっぱりぼくの世界は これで完成してるって思うんだ
 だってぼくは なにかが欠けてるわけじゃない これで完全体として 生まれてきたんだもの ☆4

  あなた自身の「当たり前」や「普通」を、他のみんなも同じようにそうだと感じているのでしょうか。相手は、どんなふうにみていたのだろう、きいていたのだろう、受け止めていたのだろう・・・相手の言動の背景を知ろうとすること、そしてそのことをふまえることは、教育にとってとても大切なことだと思います。 

3.誰もが生き生きと活躍できる未来のために

特別支援教育の「役割」って、なんだろう・・・?
 「障害の有無やその他の個々の違いを認め合いながら、誰もが生き生きと活躍できる社会を形成していく基盤となるもの」であり、「我が国の現在及び将来の社会にとって重要な役割を担っている」 特別支援学校学習指導要領解説 総則編(文部科学省2018)には、このように書かれています。
共に学ぶための「最も本質的な視点」って、なんだろう・・・?
 「それぞれの子どもが、授業内容を理解し、学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるかどうか」であると、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議 報告(2023)には記されています。

 「生きる力」を身に付けるためには、児童生徒一人一人の教育的なニーズに応じた適切な指導や必要な支援を行うことが大切ですが、それは子どもの状況によっても、年齢によっても、教育環境によってもちがっていて、その方法は簡単に見つかるものではなく、こたえは子どもたちの数だけあるのかもしれません。けれど、それはその数だけ子どもたちの小さな変化や分かった!という実感、笑顔に出逢えるということでもあります。
  実際の教育現場に行ったり、当事者の方や保護者の方からお話を伺ったり、文献を調べたり、大学の仲間とディスカッションしたりしながら、未来の教育につながるみなさんのこたえを探究してみませんか。

【引用文献】
☆1 ヨシタケシンスケ・伊藤亜紗 (2018) みえるとか みえないとか アリス館
☆2 東田直樹 (2016) 自閉症の僕が跳びはねる理由2 角川文庫
☆3 小道モコ (2013) あたし研究2 自閉症スペクトラム~小道モコの場合 クリエイツかもがわ
☆4 うおやま (2021) ヤンキー君と白杖ガール6 KADOKAWA

大体大先生リレーコラム

キーワード
  • 教育的なニーズのある子どもたち
  • 言動の背景
  • 個々の違い(多様性)を認め合う

藤原彰子(教育学部教授)

専門は、特別支援教育。特別支援学校や研究・行政機関を経て大学教員。障害のある子どもだけでなく、様々な社会や家庭環境にある子どもたちの教育的なニーズに応える学級づくり、授業づくりについて、多様な人々との相互理解と協働を大切にしながら、実践的な研究に取り組んでいる。担当科目は、特別支援教育論、知的障害教育指導法、特別支援教育特講(自立活動)など。

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