「ゼロイチ」2期生 300人から学生10人選抜
2月26日14時からファイナルピッチ 「サッカーを続けて培った力がビジネスでも通用することを示したい」
経済産業省・JETRO共催で、300人超の応募者から選抜された学生10人が約7か月間、合宿や海外派遣などに取り組む学生社会起業家創出プログラム「ゼロイチ」に、大阪体育大学サッカー部の定久(さだひさ)勇吾さん(体育学部4年、関西創価)が参加しています。カンボジアでサッカーコーチのインターンシップを通して現地の子どもと触れ合った経験から、教育格差や体験格差に興味を持ちました。現在は自身がルーツのある沖縄の子どもの体験格差の問題を「NPO団体への資金調達サポート」で解消するビジネスプランを立案し、2月26日(水)、10人によるプレゼンテーション「ファイナルピッチ」で発表。その後、学生生活と並行しながら、活動を法人化してプランを実行に移す予定です。
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カンボジアの子どもたちと。裸足の子も多い。定久勇吾さん提供
定久さんは大阪府枚方市出身。入学後はサッカー部でトップチームでの試合出場をめざして全力を尽くしました。2年生の終わりに膝を負傷したことを機に、選手としての夢を断念。「サッカー以外で自分が価値を発揮できることは何か」。そう考え、3年生の時、自ら探してカンボジアとシンガポールで約2カ月間インターンを経験しました。カンボジアでは在留外国人の子どもを対象にしたサッカースクールでコーチを務めました。
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サッカー部で
スクールに通う子どもは、欧米などの比較的裕福な家庭の子が大半でした。週末にカンボジア人の子ども達が集まるコミュニティ環境に参加する機会があり、共に遊び、サッカーをして楽しみましたが、子どもたちは靴を履いておらず、服は破れていました。「日本では考えられない」環境に驚きもありましたが、同時に子どもたちの目はキラキラしていました。子どもたちはモノやお金がなくても、スポーツをできることなどほんの小さな幸せを、全身で受け止めていました。スポーツや遊びを通して、子どもたちから多くのことを学びました。
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トップチームの引退試合で。前列左から2人目
「体験格差」は貧富の差が起因する深刻な社会問題として、解消の必要性が指摘されています。子どもの学習意欲や課題解決能力は、学校外での体験を得る機会が多いほど向上するとされていますが、経済的に余裕のある家庭の子どもたちは体験活動に豊富に参加できる一方、生活に余裕がない家庭の子どもたちには体験に参加できないのが実情です。定久さんが所属する德田真彦講師(野外教育)のゼミでも、格差解消に向けた活動や研究が行われています。
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定久さんは昨年8月、「ゼロイチ」2期生に「子どもの体験格差解消」をテーマに応募し、300名を超えるエントリーの中から10人の枠で採択されました。「カンボジアでの子どもたちとの交流が教育の原体験としてあり、また自身のルーツがある沖縄県の子どもを取り巻く環境の課題にソーシャルビジネスとしてアプローチしたかった」といいます。
「ゼロイチ」では、採択された学生10人が東京などでの約1週間の集中合宿、10日間のインド研修に臨み、ベンチャー企業の代表取締役などメンター10人から指導を受け、それぞれのテーマについてビジネスプランを練り上げました。
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「ゼロイチ」での経験について、定久さんは「多くの出会いがあり、自分の思考力が高まった」と振り返りながら、「大学までサッカーを続けて夢に向かう中で培った様々な力が、ビジネスの領域でも通用するということを示したかった」と話します。
最終のプレゼンテーション「ファイナルピッチ」は2月26日(水)午後2時から、東京都内の会場で対面とオンライン併用で行われ、10人が8分間の発表と6分間のコメントに臨み、経産省や投資ファンドなどからの6人や視聴者が審査し、表彰されます。
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定久さんはファイナルピッチで「子どもの体験格差」のソリューション(解決策)として、子供支援団体の資金調達をサポートすることを目指し、NPO団体の新たな資金調達のスキームを説明する予定です。
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定久さんは、昨年4月から今年9月までの予定で休学し、昨年8月までオーストラリア・メルボルンの現地サッカーチームでセミプロ選手兼クラブ広報として活動し、現地の公立小学校で日本語と体育授業のアシスタントを務めました。
「ゼロイチ」が終了する3月から再びオーストラリアに活動拠点を戻し、オーストラリアから帰国後に活動を法人登記して、子どもの体験格差解消のビジネスモデルを実践する予定です。
定久さんは「自分がワクワクする意思決定を続け、問題を抱えている人に価値を享受できる人間になりたい」。カンボジアで接した子どもたちと同じようなキラキラした目で語りました。
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