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2024.11.02

ロスパラリンピックめざし大学院へ 100m平泳ぎ5位の宇津木がパリ大会報告

 パリパラリンピック競泳女子100m平泳ぎ(SB8)で5位入賞した宇津木美都選手(教育学部4年)が10月31日、原田宗彦学長にパリでの競技結果や選手村での生活などを報告しました。宇津木選手は、東京大会がコロナ禍で1年延期されたため大学生として2大会を経験。卒業後は大学院に進学し、2028年ロサンゼルス大会でメダル獲得を狙うとともに、将来の夢の教員をめざして教育学の学びを深めます。
 宇津木選手に聞きました。

パリ大会について、川島康弘水上競技部女子部長(左から2人目)とともに報告した宇津木美都選手。右端は原田宗彦学長、左端は梅林薫スポーツ局長

――改めてパリ大会の感想を
とても楽しめました。(無観客の)東京大会と違うのは観客が入っていたことで、競泳の会場は毎日満席で観客でいっぱい。あそこまでの観客を見たのは初めてです。地鳴りのような声援があり、声援の音量といい音楽の演出といい何もかもすごくてライブ会場にいるような雰囲気でした。ただ、レースは思ったような結果が得られず、悔しさが残りました。

――100m平泳ぎは予選では全体8位だったが、決勝で5位。なぜ巻き返せたのか
 予選は思ったより遅かった(1分28秒15)。落ち着きすぎたのが原因だったと思います。予選の後、予選のレースを振り返りつつ決勝をどう泳ぐかを緻密に浜上コーチと相談し、それに向けた練習をしました。浜上コーチから「後は思い通りに練習した通りに泳ぐだけ」と言われ、その通りに泳いだらうまくはまりました。

――決勝では前半の50mは8位だったが、後半粘って5位。東京大会の6位を1つ上回った
 自分が巻き返したというよりも周りが落ちた展開でした。ターンの時に横で泳ぐカタリナ・ロクソン選手(カナダ)が見えました。彼女は2016年リオデジャネイロ大会の金メダリストでこれがおそらく引退レースでした。これまで一度も勝てたことがなかったので、「ここまで来たら最後に勝とう」と必死で泳いだのが功を奏したと思います。

――宇津木選手はレース前の選手紹介でも常に誰よりも笑顔で、元気・明るさがトレードマークだ
 高校の時は泳いでも、泳いでもタイムが出ずに苦しみ抜きました。レース前の招集所で泣いていたり、レースが終わった後もまた泣いていたりして、ずっと暗い顔をしていました。そんな状態で大学に来て、思った以上のタイムが出たこともあり、「高校のころ以上に落ち込むことはないだろう」「あれ以上の苦しみがないのであれば、壁に当たってもこれは乗り越えられる壁」と自分の中でポジティブに解釈できるようになりました。そこからは結構タイムも安定し、無理に自分を追い込むこともなくなりました。それが常に明るくいられる要因になっていると思います。レースに対して自信を持って挑めるというか、このレース自体を楽しむという気持ちが大学に入って積み上げられ、とにかく楽しむことを頭に入れてレースに臨んでいます。

――学生としてパラリンピック2大会を経験した選手はきわめてまれだ。大学4年間の総括を
今考えると一瞬に思えますが、すごく濃厚な時間でした。1年生の時は新型コロナの影響で、ほぼ対面授業もなく部活も休み休みになっている中で東京大会に出て、いっぱいお褒めの言葉をいただいて次も頑張るぞという気持ちになりました。そこから世界選手権、アジア大会などいろんな試合で結果を残すことができ、大きく成長できた4年間だったと思います。

――大学院進学を選んだ理由は
 入学後の4年間でベストタイムを比べると、8、9秒早くなっています。この大学でコーチと一緒に取り組んできた練習が自分に合っていると確信しているので、この環境で今後も練習を積みたいと考えたのが一番の理由です。また、大学院では教員の勉強もしつつ水泳の分析など競技に関する知識も得ることができるので、その点も重要でした。また、競技を終えた後、人生の大半は教員として教育に関わっていくことになると思うので、大学院ではしっかり教育の知識を学びながら、水泳でもっと競技力を上げるためにはどうしたらいいのかを考えていきたい。

――今後の目標は
 8年後のブリスベン大会を29歳で迎えるので、そこを最後にし、あと2大会出場したいと考えています。2028年ロサンゼルス大会では、今回取れなかったメダルを獲得したい。今後4年間は、大学で練習すると思います。長期の目標はロス大会ですが、一日一日しっかりと練習を積み重ね、気づいたらロス大会にたどりついていたというイメージで4年間やっていきたいと思います。

――教員への憧れは
 講演会に呼ばれる機会も多く、教育実習にも行って、自分が教員になりたいという思いは強くなるばかりです。子どもと触れ合うことで、元気や勇気をもらっています。もっといろんな人とかかわって、ずっと笑顔でいられるというか、自分のやりたいことをやっていられる人生でいたいと思います。

宇津木美都(うつぎ・みくに)
 京都府出身。中学3年でアジア新記録を樹立。京都文教高校時代は不振に苦しんだが、2021年、大阪体育大学に入学して浜上洋平監督とフォーム改造に取り組み、東京パラリンピック100m平泳ぎで6位入賞。2023年パラ水泳世界選手権で4位、アジアパラ競技大会では4種目で銀メダルを獲得した。行政などからの受賞多数。小中学校などでの講演は20回近い。卒業後は大阪体育大学大学院で浜上准教授(体育科教育学)の研究室に所属する。

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