日本感情心理学会の第32回大会が6月1~2日、大阪体育大学で開催されました。
日本感情心理学会は1992年、感情研究に関心を持つ研究者が集う学会として設立され、心理学領域の研究者をはじめ、広く関連分野の関係者とともに活発な研究活動を展開しています。
大阪体育大学での大会開催は初めてで、大会実行委員会委員長は本学スポーツ科学部の手塚洋介教授が務めました。本学はスポーツ心理学に特化したコース(スポーツ心理・カウンセリングコース)を全国で初めて設置し、同コースに全国でもトップクラスの数の6人の教員が在籍しています。大会では感情心理学とスポーツ心理学の接点の共有を目指し、本学の特徴や強みを活かす企画が実施されました。また、広く社会全体に研究成果を活用・還元するため、企業の最前線で活躍する研究者も多数、登壇しました。
なお、同学会として初めて、託児ルームが教育学部教室などに設置されました。
初日の6月1日はシンポジウム1「アスリートの感情」として、本学・手塚教授の司会で、武庫川女子大学・田中美吏(よしふみ)教授が「プレッシャー下のパフォーマンスー―運動制御からの理解―」、国立スポーツ科学センターの近藤みどり研究員が「アスリートの誇りの構造と目標達成行動」、横浜国立大学の相羽枝莉子助教が「アスリートの感情制御とパフォーマンス」をテーマに話題提供し、日本感情心理学会理事長の関西学院大学・有光興記教授が指定討論を務めました。
また、参加者による懇親会も本学レストランで開かれました。
最終日の2日は、日本スポーツ心理学会理事長の本学スポーツ科学部・土屋裕睦(ひろのぶ)教授が「スポーツ感情心理学への期待」と題して特別講演に臨みました。
土屋教授は日本のスポーツ心理学が、1964年東京オリンピックでの射撃選手の「あがり」に対処するための自律訓練などを契機に始まったことや、コロナ禍の影響を受けた2021年東京五輪ではアスリートへの緊急調査の結果、選手の約1割が注意が必要な高いストレスに苦しんでいたことなどを説明しました。また、ある女性選手が試合前に震えていることについて、本人は武者震いだと思っているのに、コーチは緊張ととらえている事例を紹介したうえで、「スポーツ界にある緊張イコール悪のステレオタイプを打破したい。そのためにもスポーツと感情心理学の融合は強い武器になる。心と体をつなぐ感情に注目することで大きなブレークスルーが起きる」と話し、参加者からアプリを通じて寄せられた様々な感想も紹介しました。
シンポジウム2「感情研究の社会実装」では、心理学の視点から産業界で研究開発活動を推進する第一線の研究者が登壇しました。花王株式会社感覚科学研究所の門地里絵グループリーダーが司会を務め、ソニーグループ株式会社の小俣貴宣シニアコグニティブサイエンティストが「産業・社会の問題解決に向けた心理学の活用―心理学の専門性を効果的に活用できる人材の育成―」、花王株式会社感覚科学研究所の河島三幸グループリーダーが「化粧が彩る感情体験―化粧品研究の社会実装事例―」をテーマに話題提供。大阪大学人間科学研究科の入戸野宏教授が指定討論者を務めました。
また、会期を通して口頭発表が約20演題、ポスター発表が約40テーマについて行われました。
このほか、5月31日には大会に先立ち、プレカンファレンス1「スポーツメンタルトレーニングの実際―大阪体育大学SMTチームの取り組みを例に―」と題して、本学の大学院生らが2010年に設立し、学生アスリートを対象に心理サポートなどを実施している「学生スポーツメンタルトレーニング(SMT)チーム」の活動を菅生貴之教授や大学院生が紹介しました。川村亮太さん(博士後期課程2年)、加藤憲さん(同)、浦野奈央さん(博士前期課程2年)、山口栞さん(同)の指導で、参加者は新入生アスリートを対象に実施している「新入生サポート」のエクササイズ「気になる自画像(私は他者にどうみられているんだろう??)」などをワーク形式で体験。日本感情心理学会理事長の有光教授は「トップアスリートだけでなく、新入生の方にメンタルトレーニングをしていることを知り、大学生活の出発点でのサポートが大切であることを再確認できた。また、大学院生に指導力があることも感じた。アスリートにとって、年齢が近い大学院生からサポートを受けるのはとてもいいことではないか」と感想を話していました。
BACK
社会貢献・附置施設
BACK