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2024.03.05

大学での学生・保護者対応を考えるⅡ-臨床心理学的視点をまじえて~教育セミナーを開催

 本学の「学生相談室・スポーツカウンセリングルーム」非常勤カウンセラーが講師となり、学生や保護者とどう向き合ったらいいのかをディスカッションする教職員向け教育セミナーが2月27日、大会議室で開かれました。
 本学の学生相談室・スポーツカウンセリングルームは臨床心理士をはじめ、日本代表やプロチームなどでメンタルサポートにあたる日本トップクラスのスポーツ心理の専門家らが常駐し、年間で500件前後の面談にあたっています。
 教育セミナーは、学生アスリートを心理、栄養、ATなど最先端のスポーツ科学でサポートするスポーツ科学センターが開催しました。

 教育セミナーでは、日本臨床心理身体運動学会の理事長を務め、2002年から本学で相談員を務める髙橋幸治・大阪公立大学教授(臨床心理士)が、教職員からの事前アンケートを参考にしつつ改変、創作した3つの物語風事例を提示し、「各事例について、頭の中で映画でも作るように鮮明に想像して考えてほしい」と参加者に呼びかけました。参加した教職員は4グループに分かれて、それぞれ司会者、報告者を決めた後、学生や保護者への接し方などについてグループごとに議論し、その後全体に向けてグループ討議の内容を発表しました。なお下記の事例1~3の記載は、本報告用に若干の修正が加えられています。

<事例1>
 「私のゼミの学外での活動は、基本的に学生は自主参加としているが、活動の内容次第で参加か不参加を決めているようにみえる学生や、後片付けの時間になると帰ってしまう学生もいるようだ。真面目に参加している学生が私に不満を訴えることも多くなった。学生にうまく気づきを与えるにはどうしたらいいのか、悩んでいる」

 「真面目に参加している学生を『周りを気にせずに頑張れ』と励ましてしまいがちだが、そうると、この学生に負荷がかかってしまう」(管理職職員)、「頑張っている学生には『手伝ってくれてありがとう』とほめ、積極的ではないような学生には『もっとゼミが楽しくなるためにはどうしたらいいだろう』と純粋に相談してはどうか」(教員)。あるグループ内での議論です。
 発表では、「ゼミ活動に価値を感じていない学生を念頭に、教員は、『この学びがすぐには役立つことはないかも知れないが、学び続けることで心が豊かになる』ことを伝えなければいけない」「学生自身にゼミでのルールについて話し合わせたらどうか」などの意見が出ました。

<事例2>
 ある日、部員の保護者から「子どもが、部での厳しいしごきを受け、練習中にも呼び出されて激しく叱責されるので、このままでは競技を続けられないと訴えている」と指摘された。このコーチは、ランニングや激しい練習などは競技力向上の目的があると考えている。ただし、この部員は問題のある行動があったから教育的な指導として叱責したとも考えている。コーチは保護者と部員にどう対応したらいいのか。

 「まずは保護者に『ご連絡ありがとうございます。本人と話します』と伝えることから始めるべきだ」「このコーチは保護者からの意見にショックを受けただろうが、部員とじっくり話し合わなければいけない」「コーチは指導と罰則をはっきり分けるべきだ」。あるグループではさまざまな見解が出されましたが、「この件をコーチとして成長するきっかけとしてとらえることがキーワードになる」という意見が出て、議論の方向が決まりました。発表では「コーチが自らの成長のために他部の指導者とフラットに話し合える場があれば、いい」「指導者が話し合うような場は、部活動、学生指導に限らず、あらゆる組織の管理職にも必要」などと他のグループに伝えました。

<事例3>
 私が顧問をしている部では3年生がキャプテンを中心に練習の内容などを考え、勝利をめざして厳しい練習になる年もあれば、楽しくやることを念頭に置いた練習になる年もある。3年生、下級生双方から不満の声が上がることもあるが、「部員みんなで話し合って決める」という方針を続けている。

 「このように自由自治で部活動を運営するあり方も、あっていい」「勝ちたい部員と楽しくやりたい部員が一緒に活動することは難しい」「顧問は自主性を尊重する理由を部員にはっきり説明する必要がある」「部活動の方向性、ベクトルは合わせるべきだ」。各グループからは賛否両論、さまざまな意見が出されました。

 最後に髙橋教授は「熱心にディスカッションしていただいたが、発表以上に、各テーブルでは内容の濃い議論がされていた。答えはないが、このような事例について感じること、思っていることを話すことが大切で、そうすることで自分の耳にも人の耳にも入り、ディスカッションの内容も高まる。将来、ご自身がなんらかの対応に困った際のヒントにもなり得る」と総括しました。

学生や保護者との向き合い方をグループごとに議論する参加者

髙橋幸治・大阪公立大学教授

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