NEWSお知らせ

お知らせ

2020.03.28

【東京五輪延期】「選手の心理面への影響は」 菅生教授に聞く

 東京オリンピック・パラリンピックの延期は、選手の心理面にどのような影響を及ぼすのでしょうか。スポーツメンタルトレーニング・カウンセリングなどを専攻する本学体育学部の菅生貴之教授に聞きました。

Q 選手への心理的な負担について

 1980年モスクワ五輪のボイコットで泣きじゃくった選手の姿を覚えているが、それに匹敵する未曽有の事件だ。選手への影響が大きいかどうかよりも、選手はこれから何が起きるのか分からない状況であり、不安以前に一体どうなってしまうのかという気持ちだろう。
 選手の身近に相談者がいるのかどうかが重要だが、今回の件は個人ではどうにもならないことばかりだ。いくら心理的な要素の大切さを強く言っても、競技の環境は本人ではコントロールできない。JOCや競技団体は率先して今後の五輪に向けたプランを立ててほしい。
 また、アスリートファーストというよりは、選手を中心としたアスリートセンタードで考えるべきだ。
 決してコーチはセカンドではないし、アスリートをコーチや競技団体の役員、栄養・フィジカル・メンタルなどの専門ら、支える人たちのセンターに置き、選手を中心に考える視点を各競技団体が重視してほしい。

Q 選手に求めたいことは

 逆境に打ち勝つ力を心理学でレジリエンスというが、個人差がある。1年の延期は世界中で同じ条件だが、「今がピークなのにふざけるな」と思う選手もいれば、「この1年、新たな時間をもらった」と考える選手もいるだろう。東京五輪までは、と怪我と闘いながら現役生活を延長したベテランもいる。逆境を人生の重要な転換点ととらえて次の力にできるかどうかは、選手の人間力というか人生が試される。
 延期は本人の努力の問題ではなく完全に外的な要因だ。不安や怒りの感情を包み隠す必要はなく、多くの人と共有してほしい。親、親友、コーチなど耳を傾けてくれる人を大事にして、今回起きたことの人生においての位置づけを考えてほしい。もちろん私たち専門家もそうした役割を担うことは可能だろう。

 菅生 貴之(すごう・たかゆき) 体育学部 スポーツ教育学科 スポーツ心理・カウンセリングコース。専攻はスポーツメンタルトレーニング、スポーツカウンセリングなど。日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング上級指導士(認定番号S1804号) 公認心理師(第29585号)

▲