東京オリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、夏冬通じて五輪史上初めて来年に延期されることになりました。
延期がオリンピックマネジメントにどのような影響を及ぼすのかを、スポーツマーケティング専攻で本学学長補佐の藤本淳也体育学部教授に聞きました。
Q 五輪、パラリンピック延期のスポンサー契約への影響について
IOCのスポンサー契約と放映権契約は4年単位で結ばれている。現在のIOCのTOPスポンサーの契約は2017年から2020年までだ。夏季五輪が1年ずれたことで、企業の五輪を利用したマーケティングに大きな影響を及ぼすことになる。もし、この4年単位を継承したとすると「2017-2020スポンサー&TV局」にとって夏季大会がなくなり、「2021-2024スポンサー&TV局」は夏季大会が2回となる。東京オリンピック組織委員会のスポンサーとTV局の契約も2017年から2020年なので、IOCやJOCはスポンサー契約の戦略的な変更について早急に検討に入ることになるだろう。
Q 新型コロナウイルスによる不況下での延期が及ぼす影響について
新型コロナウイルス感染症の拡大で経済への多大な影響が予想されている中、NOCや選手個人、チームとのスポンサー契約が2021年まで継続できるのかどうかは極めて大きな問題だ。これまでJOCは多数の国内スポンサーを集めて潤沢な支援を受けていたが、東京五輪が終わったらその支援が打ち切られたり、減らされたりすることはこれまでも予想されていた。経済的打撃を受けている企業が今後1年継続支援できるか否かは不透明だ。仮に継続しても、2021年のオリンピック、パラリンピックが終わった後の企業のスポーツ離れは、これまでの予測以上に大きくなる可能性がある。また、スポーツに限らず、文化の支援やCSR、SDGsなど社会的、環境的な投資にも大きく影響を及ぼす可能性が高い。
日本のスポーツは歴史的にも企業が支えてきた側面が大きい。バブル崩壊時ほどではないだろうが、実業団の休廃部もあるのではないか。プロスポーツもプロ野球の親会社は乗り越えると思うが、Jリーグの下部リーグなど広範な競技への影響が懸念される。そして、同じく日本のスポーツを支えてきた「大学スポーツ」への影響がどう出てくるのか心配だ。
ピンチはチャンス。これを機にスポーツビジネスのリスクマネジメント力を高めていくしかない。
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東京オリンピック・パラリンピックの1年延期に伴う様々な影響などについて、随時、本学の教員らの解説や見解を紹介していきます。
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