筆者:加藤良徳(教育学部教授)
1.コミュニケーションに魅せられて
大学生の時、たまたま受けた『万葉集』の文字の使い分けに関する授業に感動し、仮名を(で)書くことの研究をはじめ、博士の学位を取りました。その後、日本語表現法の研究・実践も行うようになり、仲間と一緒に教科書を10冊ほど書きました。
静岡の大学から大阪体育大学に移ってからは、面白い活動をしているグループの人たちにインタビューをしてまとめる研究をするようになり(例えば、社会人で夜間の文学学校に通って小説を書いている人たちや、ボランティアでクラウン[ピエロ]になっている人たちなど)、現在は、グループで行われるコミュニケーションの持つ癒しの力に興味を持って研究をしています。
2.グループ・コミュニケーションの持つ癒す力
グループセラピーでは、複数の参加者が集まり、互いに対話しながら学び合います。通常の個人カウンセリングは一対一で行われるセッションですが、グループセラピーでは、他のメンバーからのフィードバックや共感を通じて、個々の成長が促進されるのが特徴です。セラピーと言うと、心理的に大きな問題を抱えた方が治療として行うというようなイメージがあるかもしれません。ただ、筆者が行っているのは、いわゆる健常な状態だと認識はしているけれど、職場や学校で人間関係に難しさを感じているとか、家庭でパートナーや子供への関わりに難しさを感じている、グループでの対話を通して自己成長したいといった方々を主な対象としています。医師や臨床心理士と組んで、研究助成ももらっています。
グループでのコミュニケーションでは、自身の人間関係のパターンに気づき、新しいかかわり方や表現の方法を安全に実験しながら学ぶことができます。また、ファシリテーターのサポートで、人生のなかでの未消化の出来事や感情を表現し、解消していくことで、自己成長が促されます。グループセラピーはいわば、「対話を通して自分と向き合い、気づきと成長を得るための旅」のようなものと言えるかもしれません。
3.対話の力を活用しよう
皆さんも、様々な悩みを抱えているのではないでしょうか。自分自身のモヤモヤとした謎にアクセスし、自己理解を深めていくためには、本を読むことや誰かに教えを請うことに加えて、対話の力を利用してみるのもいいかもしれません。自分を探求したいという目的を持って集まった人たちと、少しの時間、対話をして過ごす経験は、とても暖かく、刺激的な体験になりますよ。
【参考ウェブサイト】
https://yuru-gestalt.blogspot.com/
https://opalescent-almanac-e41.notion.site/fd6f353b10c74ac9a022ce3250ff4126
加藤良徳(教育学部教授)
コーチング学、ゲームパフォーマンス分析、体力科学が専門。女子テニス部の監督として指導するとともに、主にテニスに関わる実践研究に取り組んでいる。主な担当科目は「テニスⅠ」、「体力トレーニング論」など。
関連サイト
○加藤良徳教授
○大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」