筆者:藤本淳也(スポーツ科学部教授)
1.Jリーグの誕生と成長
1993年に開幕したJリーグは、日本のスポーツビジネス界に改革をもたらしました。新しいビジネスモデルとアイデアの導入により、スポーツ振興と地域社会の活性化、青少年の健全育成に力を注ぎ込み、多くのファンを獲得するとともに、文化としてのスポーツの発展に大きく貢献しながら成長してきました。そして、日本代表チームの活躍にも繋がっています。
2.スポーツマーケティングでキャズムを乗り越える
しかし、成長の途中でJリーグは「キャズム」と呼ばれる課題に直面しました。ここでのキャズムとは、Jリーグ開幕後の初期のファンからさらに多くの人へと広がるまでの間で直面する成長の停滞期です。図が示すように、1995年から2000年の間は観客動員数が停滞し、開幕時の盛り上がりが持続した成長に繋がりませんでした。そして、2011年には震災で、2020年にはコロナ禍の影響でキャズムが生じました。この難局を乗り越えるため、Jリーグと各クラブは様々なマーケティング戦略を積極的に仕掛けてきました。具体的には、より家族向けのイベントを増やし、ファンサービスの充実を図り、SNSを活用したファンとの直接的なコミュニケーションを強化しました。さらに、スタジアム改革を進め、地域に根差した活動を展開し、試合の観戦体験を向上させるための取り組みを強化することで、徐々に観客をスタジアムに戻すことに成功しました。
3.スポーツマーケティングで探求しよう
Jリーグのこの経験から、スポーツマーケティング戦略の適切な展開がいかに強力なツールであるかが見て取れます。そして、それはスポーツマーケティングの理論と研究のエビデンスに裏付けられた実践の結果でもあります。スポーツマーケティングは本学で学ぶことができます。さあ、スポーツマーケティングの理論と研究エビデンスを使って関心のあるスポーツを探求してみませんか?
【参考図書・ウェブサイト】
一般社団法人スポーツと都市協議会 (2021)「スポーツビジネスの『キャズム』 ASC叢書3巻:新リーグ,新チームの成功と失敗を分けるマーケティング理論」晃洋書房
原田宗彦・藤本淳也・松岡宏高編著(2018)「スポーツマーケティング改訂版」大修館書店
Jリーグ公式サイト内「コーポレートサイト:ファンエンゲージメント(入場者関連)」 https://aboutj.jleague.jp/corporate/activities/fan_engagement/#c_4
藤本淳也(スポーツ科学部教授)
専門はスポーツマーケティング。プロスポーツファン研究を中心にスポーツブランド、スポーツスポンサーシップ、大学スポーツ、eスポーツなどの研究に取り組む。担当科目は「スポーツマーケティング」「スポーツマネジメント実践論」など。アメリカンフットボール部部長、アルティメット部部長。
関連サイト
○藤本淳也教授
○大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」