大阪体育大学は、運動部活動や地域のスポーツクラブなどの指導に携わる人材を養成する社会人向けリカレント講座「運動部活動指導認定プログラム」を2023年春から開講しています。2023年度秋開講の最終演習が2月11日(日)、大阪体育大学で実施され、スポーツ庁職員が視察する中、30人が対面、オンラインで参加しました。
中学校などでの運動部活動は今、大きな岐路を迎えています。
文部科学省は2020年、体罰・ハラスメントの根絶や学校の働き方改革を目的に、公立中学校での休日の部活動を地域に移行する方針を打ち出しました。このため、自治体などでは、とりわけ指導の資質や能力を備えたスポーツ指導者の確保が急務になっています。
開学以来、多数の保健体育科教諭を養成してきた大阪体育大学では、2019、20年度にスポーツ庁から「運動部活動改革プラン」事業を2年連続で受託。自学の学生を部活動の指導者に育てるプログラム「グッドコーチ養成セミナー」の開発や、学校・教育委員会に学生を紹介する仕組みを構築してきました。「運動部活動指導認定プログラム」は地域移行の方針を受け、「グッドコーチ養成セミナー」のカリキュラムをベースに社会人向けプログラムとして開発されました。
「運動部活動指導認定プログラム」は春開講、秋開講の2期制で、オンデマンド50時間、対面・オンライン併用のハイフレックス10時間の必修科目を修了すると、本学が発行する修了証に加え、学校教育法に基づく履修証明書が交付されます。
また、申請により、日本スポーツ協会(JSPO)の公認コーチングアシスタント資格が取得できます。
11日の最終授業は、対面で25人、オンラインで5人、近畿を中心に関東、九州からの会社員、医療関係者、現職の教員、元教員の方などが参加しました。
参加者はこれまで、学習指導要領、学校外での引率、熱中症などへの対応、スポーツ倫理、保護者への対応、女子生徒への配慮やバイオメカニクス、メンタルヘルス、スポーツマネジメントなどをオンデマンドで学んできました。
最終演習は「運動部活動の実践」Ⅰ、Ⅱ、Ⅲが2時間ずつ行われました。
実践Ⅰは土屋裕睦教授(スポーツ心理学)が大教室で「NOスポハラ!」「コーチング」などについてグループワークを実施。暴言などは多く存在し軽視されてきたとし、選手の主体性を育てるためには「指示」ばかりではなく「質問」を心がけるように説明。さらに、参加者は体罰などに頼らないグッドコーチに求められる資質や能力についてグループごとに話し合いました。
実践Ⅱは小林博隆准教授(体育科教育学)が言葉と動作・行動による指導法について、ワークショップと体育館でのゲームを通して指導法の体験をしました。
Ⅲでは池上正客員教授(Jリーグ元京都サンガ普及育成部長)の指導で2グループに分かれ、体育館でハンドボール、サッカー、バスケットボールなどのミニゲームを実施し、熊取町立熊取北中学のサッカー部員を指導しました。
この日は、スポーツ庁でスポーツ指導者関連施策を担当する田口雅紀・参事官(民間スポーツ担当)付参事官補佐ら同庁の3人が視察しました。田口参事官補佐は「運動部活動の地域移行における課題は、まず第一に指導者不足です。その点で、大阪体育大学が一番進んだ取り組みを行っているという話もよく聞くので、ぜひ勉強したいと思っていました。JSPO以外の指導者養成事業を視察するのは今回が初めてですが、本来のスポーツの楽しさをいかに伝えるかを前提にしたプログラムだという印象を強く持ちました。ぜひとも他大学を始めJSPO以外の機関にも広がってほしいし、我々もこういった取り組みの充実に向けて連携していけたらと思います」と話していました。
また、参加者からは様々な感想が寄せられました。
兵庫県でメンタルコーチ・トレーナーを務める宇佐美円香さんは「対面の授業では楽しく受講でき、日ごろは接しない、いろいろな人とディスカッションでき、オンデマンドも年末年始など自由な時間に受講できました。スポーツ心理、コーチングなどの話もあれば、『学校とは』の内容も良く、幅広いかなりの分量をリーズナブルに学べました」と話していました。
大阪府の元中学校教員の前川敏也さんは「38年間中学校で部活動を指導し、定年をきっかけにもっと部活動を学びたいと思い受講しました。地域のスポーツクラブでも28年指導しているので、クラブの若い人やボランティアのお父さんコーチらに学んだことを分かりやすく還元していきたい」と参加した感想を語っていました。