- 曽根 裕二 先生
- 大阪体育大学 教育学部
アダプテッド・スポーツ部 監督
- 「アダプテッド・スポーツ」??初めて聞きました!どんな競技なんですか?
- 特定の競技名ではないんです。一人ひとりの身体の状態に合わせてルールや道具を工夫してみんなが平等にプレイできるようにしたスポーツ全般を指します。
アダプテッド・スポーツとは?
一人ひとりの発達状況や身体の状態に「適応(adapt)させた」スポーツのこと
障がい者や高齢者なども参加できるように既存のスポーツを修正したもの、新たに創ったものを指します。
- みんなが一緒にできる…手が動かないとボールを投げたり受けたりできないし、目が見えないとスポーツは危険ですよね…何だかイメージできないけど、たとえばどんなスポーツがあるんですか?
- そうだね、アダプテッド・スポーツではできないことを考えるんじゃなくて、どうすればできるのかを考えるんだ。
例えばこんな道具を使ってみたらどうかな。
-
タンデム自転車 2人1組で乗る自転車です。
後部座席に視覚障がいの方が乗って、一緒にサイクリングを楽しめます。
-
ツインバスケットボールのゴール 胸ほどの高さの低いゴール。みんなでバスケットボールを行う場合には、子どもや力のない参加者は低いゴール、他の人は通常の高さのゴールに入れると得点になるようにアダプテッドすることも可能です。
-
視覚障がい者卓球 音の鳴るピンポン玉を使い、視覚障がいの方にも楽しめます。ボールをバウンドさせると難しくなるのでゴロのみでラリーを行うなどの工夫もします。
-
ボッチャ 目標のボールにいかに自分のボールを近づけるかを競う競技です。ボールを投げることができなくても写真の勾配具(ランプ)を使い、アシスタントに意思を伝えることで参加できます。
- すごい、いろんな道具があるんですね。最近は「パラリンピック」でパラスポーツも目にすることが増えたけどこれは初めてみたなぁ…
- あっ、パラスポーツとアダプテッド・スポーツは、ちょっと意味合いが違うんだ。
パラスポーツとアダプテッド・スポーツの違いとは?
パラスポーツ
いわゆる障がい者スポーツのこと、車いすバスケットボール、シッティングバレー、ボッチャ、ゴールボールなど、ルールなどが確立されているスポーツ種目
車いすバスケット用の車いす
アダプテッド・スポーツ
特定の種目を指すのではなく、身体の状態や年齢…など、スポーツをそれぞれの人に合わせるという考え方
その人の特性にあったボールを使う工夫も。
例)通常のバレーボール(右下)/風船を薄いシートで包んだもの(上)/ソフトバレーボール(左下)の3種類
- なるほど。アダプテッド・スポーツでは参加する人達によって、みんなが柔軟に加減のよいルールを決めていくんですね。
- そうです。下駄をはきすぎて有利になりすぎてもいけないので難しいですが…そこが面白いところです。
実は障がいのある人の中には「障がいがあるから自分にスポーツは無理」と思ってスポーツに親しめていない人が多いんです。でも、ルールや道具を工夫しながら、みんなで一緒にスポーツの場を共有できる方が楽しいですよね。
- もちろんです!でも道具がないと難しいとなったら、ハードルが高いなぁ…
-
道具は難しく考えなくていいんです。
身近にあるもの、簡単にできることから工夫していけばOKです。少し紹介してみるのでぜひ試してみてください。
-
工夫次第では、新しいスポーツが生まれたりして…!
面白そうですね。
- 先生、ありがとうございます!
一緒にできることからやってみます。
ワンポイント
取り入れやすいアダプテッド・スポーツの工夫例
ボールをビニールで包むと、シャカシャカと音がするので、どこにボールがあるか、目の悪い人でもわかりやすくなります。
(国際パラリンピック委員会(IPC)公認教材「I'm POSSIBLE」参照)
市販のまな板にゴム板を張ったもの。ラケットを使えなくても簡単に相手とラリーをすることができます。
ボーリングやサッカーのPKのような一人ひとりの出番が決まっているような場合は、ルールや道具を適応しやすいです。また、勝った負けたを競うだけでなく、チームでパスを何回続けたか、ペアでラリーを○回成功のような達成型のルールも取り入れやすいですね。